夕映え天使

浅田次郎

文庫・新書

満足度:8/10
憎いほどに似て非なる存在。
詩を書いたり、想いを綴ることが好きだ。そして彼の話に出てくる本質の部分に共感することが多い。それを表現するためのワードにも共感する。
ただ文脈というか、本質までのアプローチが自分とは違う。
そこにはストーリーテラーとしての凄さを感じずにはいられない。自分には持ち合わせていない部分なので勝手に嫉妬してしまう。

「夕映え天使」
事実と真実の話し。
事実と真実はどちらのほうが救いがあるのか。
久しぶりにそんなことを考えてみる。

「切符」
冒頭で個人的にびっくりするフレーズに遭遇。
「・・・町なかの中古家具屋やネオン管のまたたく酒場の窓などには、まだ彼らの残り香が感じられた。」
なんてことはないかもしれないが、ちょうど最近自分の作品の中でやっとのことで絞り出したフレーズが「残り香」だったので勝手にやられた気がした。
そしてとどめは最後のフレーズ。
「その一言は、命を絞るほどつらかった。」
ものすごく、ものすごく分かるッ!
そして自分の感情を表現したくてもできずにいたフレーズだ。
結局自分の場合は、「張り裂けそうなほど胸が締め付けられた」と表現したけどなんか物足りなくて。
「命を絞るほどつらかった」
そう、これだ!

「特別な一日」
一瞬と永遠。
そこでそうくる?なんか憎らしかった。
同じテーマでもこんなアプローチは絶対マネできない。
そういう凄さを感じる。

「琥珀」
これも真実と事実の話しに近いかな。
同じテーマ性でもこれだけ舞台もなにもかも違う話を作れる凄さを感じる。

「丘の上の白い家」
もし小説家になりたいと思ったら、この話はオススメしたい。
説明なく時代を越えた場面転換できるところは見事としか言いようがない。
時代前後することなく、時系列であるところも見逃せない。

「樹海の人」
うーん、本作品のなかで唯一よくわからなかったかも。