冬の眠り

The Winter Vault

アン・マイクルズ

文庫・新書

ドラマ

満足度:7/10
この本を読もうと思ったきっかけは、作家が女性であること、心の移り変わりが垣間見れるのではと思ったこと。
実際のところ、心情の部分はとても興味深く追えたが、情景描写を想像するのが世界を知らないぼくにとってはとても難解だった。

文章は詩のようで、高尚で上品な作品だと感じた。

相手を思うがゆえの喪失とそれを埋めるかのような癒やし。

世間はそれを許さないのが常。
当事者たちの気持ちを何も知らないまま、そのカタチを避難するのだろう。
それを「欺瞞」と呼んでしまっては、どこに救いがあるというのか。

そのカタチは誰にも避難できるものではない。
そう、喪失を抱えたときには誰にとってもどんなカタチであれ、癒やしは必要なことなのかもしれない。たとえ「欺瞞」と第三者が騒ぎ立てたとしても。

エイヴァリーはジーンのすべてを許すことができる包容力を持っている。
その優しさが深い喪失を生ませてしまうのは、誰も悪くないだけに、悲しいという言葉では足りなく深い。

自分の心に正直になることは、ひとりで完結できないなら、そう簡単にはいかない。
そしてその心が本当かもわからないから厄介だ。
とはいえ決めつけることでもない。

自然体といえばよいだろうか。ジーンは自然体でありながら変化を受け入れることができる。
このニュアンスは自分にはまったくないものだ。
そこには理由がないのだ。
それが女性らしさなのかな。